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柊あおい 「星の瞳のシルエット」1巻 感想 (前編)

ブログ開設第一弾に取り上げたのは、柊あおいの伝説的名作漫画「星の瞳のシルエット」

かつて全国250万乙女のバイブルと呼ばれた少女漫画を、40間近のオジさんが読んで感想をブログに書き連ねる。
客観的に見て、気持ち悪いと謗られても仕方のないところだろう。

めげずにおおよそ30年物のりぼんマスコットコミックス版を再読。
懐かしさと愛おしさと、そしてやはり面白さに溢れた作品である。

 


◎夜空を見上げる三人

 

 物語は、夜の帰り道、星空を見上げる香澄、真理子、沙樹の3人の会話から始まる。

夜空の星の中でいちばん明るい星・シリウスを見つめ、遠い記憶を思い起こす香澄に対し、地面に落ちている100円玉を獲得し喜んでいる真理子。
彼女が長い長い歩みを経て、結局全天に輝く一等星のような想い人とは結ばれなかったが、地味ではあっても確かな益をもたらす男の子との縁を獲得することを暗示しているのだろうか。
そんな強引な解釈を交わしたりしなくとも、やがてこの三人の関係がぐちゃぐちゃになり、苦悩を抱え、想いをぶつけ合い、そして再生をしていく物語を知る身としては、一種の感慨を抱く冒頭である。

主要人物七者七様、恋と友情とに散々揺れ動き、葛藤し、苦悩を抱え、それぞれ精一杯の思いで行動し、絡み合ってまたややこしいことになったりドツボにはまったり。

そんな長い長い物語は、静かに始まった。

 

 

◎想い出と再会

 

朝の登校シーン。わずか3ページで三人娘+司の人となりや関係性が大体わかる、見事なイントロダクションとなっている。
しっかりしているように見えて、忘れ物が多く、ドジなところがある沢渡香澄。彼女のこの特性は、中学時代の間は物語を進める重要な要素の一つとなる。
ケーキ屋の案内を見て表情を輝かせる森下真理子。
団地で隣同士の泉沙樹と白石司は、朝から悪態をつき合いながら競走するように登校。司は、少女漫画の世界にのみ時折生息が確認される、学校のモテ男ポジションである。
なお、スケッチブックの存在で、三人娘と司が違うクラスであることをあらわすあたり芸が細かい。

きっといつものように楽しい学校生活。真理子が好きな人ができたことを二人に伝える。

「あのね…1組の久住くん。きゃ~~ん、いっちゃったぁ(はぁと)」

親友二人に、自分の好きになった人をカミングアウトする真理子は、恋の喜びで溢れている。こんな幸せな恋心が、香澄を、久住を、司を、そして真理子自身をも長く長く縛り付けることになるとは、この時点で誰も知らない。

そんな真理子をはじめ、みんな恋とか片思いとかソワソワする年頃、14歳。
じゃあ自分は……と、星のかけらをもらったあの日の記憶を思い起こす香澄。
自分には宝物のような想い出を塗り替えるような恋なんてやってくることないだろうなと。そんな気持ちでいたところに、出会いが訪れる(実は再会)。

弓道場にてすべって転んで放り投げてしまった鞄を受け取ってくれた男の子。
どっからどう見ても、ついさっき自分が回想した記憶の中の少年が成長した姿なのだが、香澄は気付かずにただときめくばかり。

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あれっ、あのときのあの子やん! とはならないものだろうか。

弓道姿に惹かれ、てへっと舌を出した表情に射抜かれるやいなや、その人が真理子の想い人である久住智史くんであると知らされ、ちょっとがっかり。

ちなみに、このとき久住くんの方は、沙樹が香澄の名前を呼んだことに反応し、これが出会いでなく再会であることに気付いている。
こういう「視点人物の主人公よりも、実は相手の男の子の方が先に意識をしている」というのは少女漫画でよくある構図な気がする。同作者の天沢聖司なんてその典型かと。

 


◎募る想いとクッキングクラブ

 

生徒手帳の一件や、早朝練習する姿を目の当たりにしたりで、急速に久住くんを意識し始める香澄。こりゃ完全に惚れてますわの状態になりつつある中、真理子の提案でクッキングクラブを作ることに。

調理室の窓から弓道場が見える=毎日久住くんが見れる→調理室を使用したクラブ活動を始めよう!

よくよく考えたら、なかなか凄まじい発想と行動力だなと。

異様に理解があり、また活動中に顔を出すわけでもない、とんでもなく便利な顧問も確保し、楽しく料理本を購入し、いよいよ活動開始。

こうして久住くんを毎日見るためのナイスアイディアは実現に至り、幸せいっぱいの真理子だったが、これが香澄と久住くんをも接近させることに繋がるとは、露ほども思っていないのだった。


当初、作品全体で感想記事書こうと思い、再読を始めたものの、こりゃ1巻1記事のペースでいかないと書ききれないなと思い直して、いざ書き始めたところ第1話だけで1記事になってしまった……

まあ初回なのである程度は丁寧にいかないと仕方ないだろうか。次回からもう少しサクサクとやっていけるかなと。